今後30年以内に70%~80%の確率で発生が想定されている南海トラフ巨大地震に備え、非常食の備蓄は家族の生命を守るために極めて重要です。しかし、ネット上では、ローリングストックを始めたけど、面倒だからやめたいとか、やってもうまくいかないといった悩みが見られます。
このような悩みにお応えして、本記事では自らの経験を踏まえ、簡単で、らくちんで、失敗しないローリングストックのやり方を解説しました。
読んでいただくと解決策が見えてきます。
少しでもお役に立てれば嬉しいです。
目次
ローリングストックの本当の狙いは?
・南海トラフ巨大地震の想定被害は甚大
・「自助」を普及・浸透させ、備蓄を推し進める
・ローリングストックの役目は備蓄の一部を肩代わり
断水・停電・ガス停止でも食べられる食品をストックする
・停電・ガス停止はカセットガスコンロで代替できるが、断水は水道水を溜めるしか手がない
・常温で保存でき、食材の水洗い、食器の洗浄をしなくて済む食品をストックする
ローリングストックの失敗しないコツ
・消費したら補充するのでなく、買ったら古いものから消費する
・ストックリストで事前に入れ替え対象を把握する
・入れ替えたらストックリストを書き換える
・常備薬、救急用品、カセットボンベなども対象にできる
まとめ
ローリングストックの本当の狙いは?
ローリングストックは、賞味期限切れによる食品ロスをなくすことが主目的のようにいわれていますが、必ずしもそうではありません。本当の狙いは、自助の推進による南海トラフ巨大地震における減災、すなわち非常食・飲料などの備蓄の普及・推進です。
南海トラフ巨大地震の想定被害は甚大
今後30年以内には70%~80%の確率で、マグニチュード8~9クラスの巨大地震が発生するといわれています。この地震は、南海トラフ巨大地震と呼ばれ、西日本を中心に太平洋側で大きな被害が想定されている巨大地震です。
政府の中央防災会議によると、太平洋側の静岡から宮崎にかけての一部地域では震度7の地震、隣接する広範囲の周辺地域では震度6強から震度6弱の地震が想定されています。
また、津波については、津波高10m 以上の巨大な津波が太平洋側の13 都県にわたる広い範囲で襲来することが想定されています。
南海トラフ大地震の被災地域は、太平洋ベルト地帯を含む超広域であるため、生産拠点、物流拠点に鉄道網、道路網、港湾などが受ける被害が大きく、生産・物流が正常に機能しないためにスーパーやコンビニの店頭から商品が消えた状態がしばらく続くことが想定されます。
「自助」を普及・浸透させ、備蓄を推し進める
南海トラフ巨大地震が想定通りだと、静岡から宮崎に至る太平洋側全域という超広域で被害が発生し、当然、地域内に存在する国の機関、県や市町村、自衛隊駐屯地、それに電力会社などのライフラインを提供する企業が被災し、職員やその家族、家屋にも被害がでているのも容易に想像できます。ライフラインの復旧も困難を極めるだけでなく、住民を支援する立場であった「公」の機関自らが被災しているため、これまで受けたり、見聞きしたような「公助」は期待できないと心得るべきでしょう。
一方、国民の間で非常食の備蓄が進まない理由の一つに、備蓄に掛かる家計の負担が重いというのがあります。防災用で賞味期限(又は保存期間)(以下、単に「賞味期限」といいます。)の長いものを、まとまった数量で購入しょうとするとかなりの負担を強いられます。
そこで、提唱されたのがローリングストックなのです。
つまり、なかなか進まない非常食の備蓄の一部を、賞味期限の比較的短い食料で、日常生活の中で食べているものに代替えさせようということです。そうすれば、普段食べている食品ならいつでも多少の買い置きもあるし、賞味期限が短いほど価格が安くなっているから、備蓄に伴う家計の負担が軽減できるという考えです。
賞味期限は短ければ入れ替えまでの期間が短く、通常の備蓄よりも早く回転させるため賞味期限切れの発生の可能性が低くなるという副次的効果も期待できるわけです。
ローリングストックの役目は備蓄の一部を肩代わり
非常食の備蓄に伴う家計の負担を軽減するために、賞味期限が長い非常食に比べ比較的価格が安い、賞味期限がやや短めの非常食を循環消費するローリングストックの導入が推奨されています。
南海トラフ巨大地震の発生を想定して、1週間分の非常食を備蓄するとした場合、1人あたり21食、3人家族だと63食になります。通常の備蓄とローリングストックと合わせて63食を確保する必要があるため、この63食のうち何食分かをローリングストックでまかなうことになります。ローリングストックで常時、ストックしておくべき食品の数量の目標がなくてはなりません。
断水・停電・ガス停止でも食べられる食品をストックする
南海トラフ巨大地震が発生すると、発生直後から1週間は、ライフラインがほぼ全面ストップする状況におかれ、週の後半から通信や電力が復旧することが想定されます。
停電・ガス停止はカセットガスコンロで代替できるが、断水は水道水を溜めるしか手がない
断水に備えるには、飲料水はペットボトルのミネラルウォーターを備蓄しておくことでほぼ解決できます。
問題は、調理、洗顔、手洗い、トイレなどに使う生活用水です。生活用水は、1日につき1人あたり10~20L必要といわれています。これを1週間分確保するには、水道水を浴槽やポリタンクに溜めるしか手がありませんが、圧倒的に足りません。
★一口に生活用水といっても、調理に使う水には厳密にいうと2種類あって、一つ目は、アルファ米、カップ麺などに注ぐ水(又はお湯)、二つ目は湯せん(レトルト食品を温める)に使う水です。1つ目は直接、口に入るため飲み水と同じで衛生的でなければなりません。二つ目の湯せんの水は、口に入るわけではないので、飲み水ほどの衛生的レベルは求められません。
断水に備え、生活用水を溜めておく方法の詳細については、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】断水に備え水道水を備蓄!賞味期限と保存方法
常温で保存でき、食材の水洗い、食器の洗浄をしなくて済む食品をストックする
では、ローリングストックではどういう食品をストックすればよいのでしょうか?
通常の備蓄品の一部を肩代わりするのですから、基本的には通常の備蓄品と同じです。
食品については、通常、非常食といわれている食品で、次の3つに該当するものです。
①常温で保存できる
➁賞味期限が比較的長い(賞味期限が短いと入れ替えが面倒なので6か月超~1年程度がやりやすい)
③調理しないで食べられる(できるだけ水や火力を使わずに食べられるもの)
ローリングストックの失敗しないコツ
ローリングストックも通常の備蓄も同じですが、管理する対象が賞味期限だけではありません。
ローリングストックや備蓄は、想定される災害に対して、家族全体で必要な食品を確保しておくことが目的なので、足りているかどうかがポイントになります。足りないとは、保存されている食品の数量が足りないというだけでなく、賞味期限が切れて食べられないものも含まれます。
消費したら補充するのでなく、買ったら古いものから消費する
一般の家庭では購入する商品の価格に敏感ですから、チラシを見て買い物をしたり、あるいは少しでも価格の安い商品を求めてスーパーをはしごしたりしています。
「消費した量に応じて補充する」という方法は分かり易く、理にかなっています。しかし、無くなったものを補充しなければいけないという背景のもとでは、価格を気にしないで買い物をすることになります。
価格を気にする家庭(我が家もです)の消費行動は、「消費したら買う」ではなく「安くなっていたら買う」ですから、安い売り出しがあるのを待っています。そのうち忘れてしまうかもしれません。災害に備えていたはずの備蓄が不足していれば、突然、大地震に見舞われたらどういうことになるでしょうか?
では、どうしたらよいのでしょうか?実は簡単なことで、発想の転換を図ればよいのです。
賞味期限を気にすることは同じですが、「消費したら買う」ではなく「買ったら古いものから消費する」ことにすれば解決できます。
例えば、1か月後~2か月後の間に賞味期限が到来しそうな食品をストックから取り出して、一時別保管しておき、1か月の間に取り出した食品を補充するため、お買い物ついでに価格を見ながら購入します。補充だからといって同じメーカーの同じ商品にする必要はありません。1食分の補充なら1食分以上であれば何も問題がありません。備蓄品に掛かるコストをできるだけ安くするということが、ローリングストックのそもそもの狙いなのですから。
補充できたら、一時別保管している食品の中で古いものから順次消費しましょう。
「消費したら買う」ではなく「買ったら古いものから消費する」をおすすめします。補充を忘れて備蓄が不足する事態は避けられるため安全で、しかも安く買えるチャンスが増えます。
ストックリストで事前に入れ替え対象を把握する
ストックリスト(一覧表)を利用すると、次のようなメリットがあり、在庫の管理がうんと楽になります。
①ストックリストがあると、いちいち現物のラベルを見なくて済むので楽チン
消費期限を間近(★)に控えた食品、つまり入れ替え予定の食品を把握するためには、ストックリスト(一覧表)の利用が便利です。
一覧表に必要な情報は最低限、次の3つです。
・食品名(商品名) 必要であればメーカー名も
・数量
・賞味期限
これらの情報が記載された一覧表があれば、食品の保管場所で現物を確認する必要がありません。リビングでソファに座って温かいコーヒーを飲みながらでも、一覧表に目を通すだけでそろそろ賞味期限が近づいているものはどれか判別できます。
該当するものに印をつけておけば、入れ替えるためにスーパーに行く際には「お買い物リスト」になります。わざわざメモする必要もありません。
★賞味期限の間近とは、あと何日で賞味期限を迎えるという厳密な意味ではありません。
例えば、今日が10月1日だとすると、大雑把に11月中に賞味期限を迎えるものを対象に入れ替えるという発想で十分です。10月中に、価格を睨みながら補充の買い物もでき、古いものから順次食べることもできると思います。1か月毎だと年12回となり大変だと思われるなら、2か月毎でも3か月毎でも差支えありません。早めに入れ替えるのは何の問題もありませんし、実情に応じた方法にする方が長続きします。
➁賞味期限ごとに区分けしてストックするという面倒なことが要らなくなる
賞味期限を管理するために、賞味期限が異なるごとに(あるいは賞味期限が近寄っているものをグループ分けして)小分け用の収納ケースを用意して食品を入れ、ケースには賞味期限を書いたポストイットなどを貼りつけるなどの方法が見受けられます。収納ケースを重ねて保管しなければ場所をとり、1か所で保管することが無理ならば複数の場所に分散させることになり、かえって面倒になりませんか?
ストックリスト(一覧表)があれば、ローリングストックで保管する食品は、例えば、納戸、サービスルームなど1か所にダンボール箱に入れて保管することが可能です。なぜなら、食品の現物を見なくても食品ごとに賞味期限がリストで確認できるからです。入れ替え対象の食品が決まれば、段ボール箱から取り出すだけです。
ストックリストを作成するには、パソコンが使える方にはExcelを利用されることをおすすめします。
リストによる賞味期限の管理については、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】非常食の備蓄管理をExcelで簡単に!
入れ替えたらストックリストを最新のものに書き換え
ストックしている食品を入れ替えたら、ストックリストに記載されている食品名、数量、賞味期限を新しいものに書き換えましょう。ローリングストックを実行して、面倒だなと思われるものがあるとすれば、唯一、この書き換えだけです。多くても1か月に1回のことです。
常備薬、救急用品、カセットボンベなども対象にできる
ローリングストックという方法でストックの管理をするのは、食品に限られたことではありません。むしろ、使い切ってなくなる前に新しいものを購入すべきである、常備薬、救急用品などの日用品も対象にすることをおすすめします。賞味期限がないものでも、日常、使っているカセットボンベ、ティッシュペーパー、乾電池など災害が起きた場合に絶対必要で、しかもスーパーの店頭から商品がなくなる恐れがあるものも対象にしましょう。
まとめ
本記事では自らの経験を踏まえ、簡単で、らくちんで、失敗しないローリングストックのやり方を解説しました。
ポイントは、ネット上で見られるような形式や手法に拘らないことです。やること自体はそんなに難しいことでないので、シンプルに行きましょう。次に3点です。
①とにかくストックリスト(一覧表)を作る
➁ストックリスト(一覧表)で入れ替え対象を把握
③買ったら古いものから順次食べていく
南海トラフ巨大地震の備えに関する総合的なまとめ記事については、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】防災グッズと日頃の備えで命を守るサバイバル防災術
南海トラフ巨大地震に備える非常食などの防災グッズの詳細については、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】まず1週間分備蓄!食べ慣れた非常食を厳選
【南海トラフ大地震】厳選!本当に必要な防災グッズ(備品・消耗品)
南海トラフ巨大地震の備えとして、アウトドアグッズ、ポータブル電源の購入を検討されている場合は、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】停電時に役立つアウトドアグッズ
南海トラフ巨大地震の備えとして、ウォーターサーバーの導入を検討されている場合は、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】ウォーターサーバーは停電しても常温の水が飲める
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