防災といえば、非常食など防災グッズの備蓄にばかり目が行っています。地震などの災害は自宅に居るときに起きるとは限りません。家族でショッピングや外食するため、都心の繁華街に出かけたときに大地震に遭遇することもあり得ます。では何を備えればよいかというと、漠然とし過ぎてわかりにくいですね?
本記事ではそのような問題意識にお応えして、調査・分析したものをまとめました。
お読みいただければ、心の準備も含めて備えるべきものは何かを見出していただけると思います。
目次
南海トラフ巨大地震とは?
地震の震度と人が感じる揺れ方
・地震の揺れの体感と起こる事象
・超高層ビルの長周期地震動
繁華街にいるときに地震が起きたらどうする?
・大型商業施設(ショッピングセンター、デパート、家電量販店など)では
・映画館・劇場・音楽堂では
・地下街(商店街、地下鉄駅、JR・私鉄ターミナル駅)では
・繁華街の街中では
・超高層ビル(デパート、レストラン、ホテル)では
・エレベーター内では
地震の揺れが収まったら自宅に帰れるのか?
・帰宅困難者は施設内または一時滞在施設で待機する
・混乱収拾後、帰宅困難者は順次、帰路につく
今後、商業施設を利用するときに心がけたいこと
・エレベーターはできるだけ利用しない、利用する場合でも満員のときは見送る
外出するときには、普段から心がけたいこと
・防災グッズの携行
・スマホには防災アプリをインストール
まとめ
南海トラフ巨大地震とは?
南海トラフ巨大地震とは、西日本を中心に太平洋側で大きな被害が想定されているマグニチュード8~9クラスの巨大地震です。
政府の中央防災会議によると、太平洋側の静岡から宮崎にかけての一部地域では震度7の地震、隣接する広範囲の周辺地域では震度6強から震度6弱の地震が想定されています。
また、津波については、津波高10m 以上の巨大な津波が太平洋側の13 都県にわたる広い範囲で襲来することが想定されています。
南海トラフ巨大地震の震度分布(強震動生成域を陸側寄りに設定した場合)
南海トラフ巨大地震の津波高
(「駿河湾~愛知県東部沖」と「三重県南部沖~徳島県沖」に「大すべり域+超大すべり域」を2箇所設定した場合)
出典:国土交通省気気象庁HP
地震の震度と人が感じる揺れ方
南海トラフ巨大地震の被災地域では、最も地震の揺れが強いところで震度7、隣接する広範囲の周辺地域では震度6強から震度6弱の震度が想定されています。
1995年に発生した阪神・淡路大震災では、神戸市、芦屋市、西宮市、宝塚市、北淡町(いずれも兵庫県)で震度7を記録し、2011年に発生した東日本大震災では、栗原市(宮城県)で震度7を記録しています。
エネルギーの小さい地震や震源地が遠隔地である比較的小さな地震の揺れについては、日頃から体験していますが、震度6とか震度7の地震の揺れになると一部の地域の方を除けば体験していません。震度7とはいったいどのような揺れになるのでしょうか?
地震の揺れの体感と起こる事象
地震の揺れにより、人がどのように体感するのか、また周囲ではどのような事象が起こり得るのかについては、気象庁は以下のように解説されています。
超高層ビルの長周期地震動
地震が起きたとき、一般的な揺れの感じ方は前項のとおりですが、超高層ビルの最上階などの高層階、たとえば、大阪にある「あべのハルカス」(60階 300m)の最上階にある展望台「ハルカス300」で食事を楽しんでいたところ、突然、マグニチュード8~9クラスの南海トラフ巨大地震に襲われたとしたら、どのような事態が待ち受けているのでしょうか?
2015年12月に内閣府が、南海トラフ巨大地震による長周期地震動が超高層ビル(高さ60m超)に与える影響について発表されています。
発表によれば、長周期地震動による建物最上階の最大揺れ幅は、東京・名古屋・大阪の三大都市圏の沿岸部を中心とする地域では1m~2m程度、中部圏及び近畿圏の一部地域では3m以上と推計されています。揺れ幅の数値は片振幅の大きさであるため、往復の揺れ幅にすると、この2倍、最大で6m以上になります。
周期の短い地震動では低層の建物が強く揺れ、比較的短時間(数秒から数十秒)で揺れが収まるケースがほとんどです。長周期地震動では超高層ビルが長い時間にわたってゆらゆらと大きく揺れ続けます。
そのため、高層階では、人は立つことができず、はわないと動くことができない、固定されていない什器・家具類は移動し、転倒する事態が発生します。特にキャスターがついている什器類は揺れに呼応して動き回るため、人に衝突する被害が懸念されます。
また、超高層ビルでは重要な移動手段であるエレベーターが停止し、閉じ込めが発生する恐れがあります。
繁華街にいるときに地震が起きたらどうする?
地震が発生したときに伝搬される揺れは、初期微動(P波)の小さな揺れと、主要動と呼ばれる大きな揺れ(S波)があります。P波の方がS波より速く伝わる性質があるため、震源地との距離によりますが、S波の大揺れの前に、小さな揺れのP波が数秒から数十秒続きます。
S波が到達し大揺れになったら、歩くことも立つこともできなくなるため、緊急地震速報を受信したり、カタカタ揺れるような地震の小さな揺れを感じたりした場合は、直ちに安全な場所へ移動しましょう。
★緊急地震速報とは?
緊急地震速報は、地震波が2点以上の地震観測点で観測され、最大震度が5弱以上または最大長周期地震動階級が3以上と予想された場合に発表されます。発表される内容は以下のとおりです。
・地震の発生時刻、発生場所(震源)の推定値、地震発生場所の震央地名
・強い揺れ(震度5弱以上または長周期地震動階級3以上)が予想される地域及び震度4が予想される地域名
出典:気象庁HP
大型商業施設(ショッピングセンター、デパート、家電量販店など)では
ショッピングセンターやショッピングモールには、小売店舗の他に、レストラン、フードコート、キッズスペース、ゲームセンターなどがあり、クリニックや映画館などが集結しているため、特に休日にはたくさんの家族連れの方などが訪れます。
このような多数の買い物客等で賑わう大型商業施設が、突然、巨大地震の強い揺れに見舞われたら、いったいどうなるでしょうか?
買い物客は強い揺れのために立っておれなくなって、腰を抜かしたように床に座り込むことになり、揺れが収まってしばらくすると、我に返ったように早く逃げなければと行動し出すことになると想定されます。団体行動している集団であれば統率がとれるのでしょうが、不特定多数の人の集まりではあちこちでパニックが発生し、そのパニックを見てさらにパニックになる集団も現れ、収拾がつかない一大混乱が発生することが懸念されます。
周囲の状況がよくわからない段階では、慌てて行動すると二次災害に巻き込まれる可能性があります。まずは一人ひとりが冷静になり落ち着いて行動しましょう。
①緊急地震速報を受信したら、危険な場所から離れる
大型商業施設では、緊急地震速報を受信したら、館内放送で地震がくる旨が伝達されます。
ショーケースなど倒れやすいものから離れ、ガラスの窓際やドア付近を避けて、近くの柱や壁の付近で待機しましょう。係員が避難誘導している場合はその指示に従いましょう。
近年に建てられた大型商業施設は厳しくなった建築基準に基づいて設計・施工されているため、まず建物自体が倒壊する心配はありません。慌てて避難する必要がないため、バッグなどで頭を保護し天井の落下物に気を付けながら、落ち着いて行動しましょう。エレベーターは動いていても絶対乗らないでください。
➁揺れが収まったら係員や警備員の案内誘導に従って避難する
揺れが収まったら、避難を開始します。このとき、係員や警備員が案内誘導している場合はそれに従って行動しましょう。
余震がくる可能性があるので、避難する際もバッグなどで頭を保護しましょう。
映画館・劇場・音楽堂では
一つの閉鎖空間にたくさんの人が集まる映画館や劇場など、しかも上映(又は公演)中だと照明が消えていますが、この時、地震の揺れがきたらどうすればいいのでしょうか?観客が避難するため、我先にと近くの出口に集中したら、将棋倒しなどの二次災害が起きる可能性もあります。パニックにならず、落ち着いて行動することが大切です。
①緊急地震速報を受信したら上映(又は公演)が中断し、照明が点灯する
映画館等では、緊急地震速報を受信したり、大きな揺れがあると上映(又は公演)が中断され、館内が明るくなります。その後、館内放送で地震がくる旨が伝達されます。係員の誘導があるまでは、その場で、バックなどで頭を保護し、座席の間に身を隠して、揺れが収まるのを待ちましょう。
館外に避難したくなる衝動に駆られますが、揺れている最中に避難することは危険が伴います。
➁揺れが収まったら、安全な場所へ避難する
揺れが収まったら、係員の指示に従って、ロビーなど安全な場所へ避難しましょう。出口は複数の扉が開けられますので、1か所の出口に集中することのないよう、落ちついて行動しましょう。
★映画館の場合、非常口の場所と避難経路は、上映開始前のスクリーンで案内されますので、必ず確認しておいてください。非常口には緑色の案内灯(誘導灯)が設置されています。
★途中まで観たチケットは?
とりあえずチケットは保管しておきましょう。後日、そのチケットを見せて説明することで、映画館側が対応していただけると思われます。そのときの状況によっては、別の日に観られる振替券などが貰える場合もあります。
地下街(商店街、地下鉄駅、JR・私鉄ターミナル駅)では
地上ではなく地下街にいるとき地震に起きたら、どうすればよいのでしょうか?
大地震が起きても、地下の揺れは地表の揺れの半分程度の大きさで、地上より安全だといわれています。しかし、埋立地が多い湾岸部など地盤が弱いところでは、地下だから必ずしも安全とはいえない場合があります。
また、地震に伴う火災のリスクを考慮すると、火が回って煙やガスが充満したら地下では容易に逃げられないため、たとえ揺れが弱くても、地下に留まるより地上に出た方がより安全のように思われます。
①緊急地震速報を受信したら、危険な場所から離れる
地下街のショップにいるときは、バッグなどで頭を保護して、倒壊やガラスの破損の恐れがある商品棚などから離れ、揺れが収まるまで待機しましょう。
地下街の通路を歩いているときは、慌てずに、バックなどで頭を保護し、通路の壁に寄って揺れが収まるのを待ちましょう。
➁揺れが収まったら、地上に脱出する
揺れが収まったら慌てず、速やかに地上に脱出しましょう。地下街では60メートルごとに非常口が設置されています。緑色の非常口マークを目印に、殺到している非常口を避け、落ち着いて壁に沿って脱出しましょう。火災が発生していなければ、地下街は比較的安全ですが、地上への出口付近で火災が発生していないか確認し、炎や煙が見えたら他の出入り口から避難しましょう。煙がひどい場合は、ハンカチなどで口や鼻を覆い、深く吸い込まないようにしましょう。
地下街は、停電しても非常用照明が点灯します。地下街のような閉ざされた空間で、大勢の人がパニックになって一つの出入口に殺到すると二次災害が起こります。冷静に行動しましょう。
避難口誘導灯
非常口・避難口そのものの位置を表す
通路誘導灯
非常口までの経路を示す
繁華街の街中では
繁華街の街なかでは、通りの両側には商業ビルなどの建物が立ち並び、大勢の人が店舗などの建物に出入りしながら歩いています。ターミナル駅に近いところでは、昼も夜も人で賑わっています。
このような場所で、突然、巨大地震に襲われたらどのような事態が待ち受けているのでしょうか?
地震の強烈な揺れのため人は立っていられないばかりか、通りの両側に建っているビルから剥がれた外壁、割れた窓ガラス、建物から突き出ている多数の看板などが路上に落ちてきたり、アーケードのある通りでは天井からの落下物があるなど危険がいっぱいです。
①緊急地震速報を受信したり、小さい地震の揺れを感じたら、安全な場所へ避難する
通りにとどまると、ビルから落下物に襲われる危険があるため、大きな揺れがくるまでに、安全な場所へ避難しましょう。アーケードのある通りでは天井からの落下物の恐れもあります。バッグや上着などで頭部を保護し、落ち着いて行動しましょう。
建物から離れた広場のような場所が近くになければ、比較的新しいビル(鉄筋コンクリート造り)の中が安全です。車道方面への避難は、地震の揺れでハンドルをとられた車が突っ込んでくる可能性もあり、注意が必要です。
➁揺れが収まったら、一時退避場所へ行く
揺れが収まったら、周囲の安全を確認して、公共交通機関が動いていないようであれば、近くの一時退避所へ行きましょう。ターミナル駅やその周辺では多くの屋外で行き場のない人が滞留し、ごった返しています。混乱に巻き込まれないよう注意しましょう。
★一時退避場所とは
災害時に行き場のない人が、帰宅手段の確保(短時間で交通機関が復旧する場合)や一時滞在施設等の受入が開始されるまでの間に一時的に退避する場所(緊急避難場所等)をいいます。
具体的には、大規模地震の余震などから生命、身体を守ることができるターミナル駅周辺等のオープンスペース、公園や大型駐車場など屋外空間が想定されています。
なお、京都市では「緊急避難広場」、大阪市では「情報提供拠点」と呼ばれています。
超高層ビル(デパート、レストラン、ホテルなど)では
超高層ビルは、柔構造でできているため倒壊する心配はありませんが、超高層である故に特有の「長周期地震動」が発生します。
①緊急地震速報を受信したら、危険な場所から離れる
緊急地震速報は震源に近い地震計が小さい揺れを感知した段階で発信されます。地震の揺れが大きくなるまでに少し時間があるため、慌てずに窓や什器などが転倒・倒壊する危険のある場所から離れましょう。できれば廊下やエレベータホールなどの安全な場所に移動しましょう。
周期地震動特有の、船酔いしそうなゆっくりとした揺れ幅の大きい揺れがしばらく続くため、揺れが収まるまで床にすわるか、手すりなどに捕まり、飛ばされないようにしましょう。
➁揺れが収まってもビル内で待機する
揺れが収まっても、ビル管理者(防災センターなど)の案内があるまでビル内で待機しましょう。
超高層ビルは柔構造なので倒壊する心配はありません。ビルの外へ避難することは、ビルから割れたガラスなどが降ってくる危険もあり、却って危険です。ビル内に留まる方がむしろ安全です。
全てのエレベーターが停止しており、唯一の移動手段が非常階段になります。非常階段は主に火災を前提にして設けられているため幅が狭く、超高層ビルの全フロアから人が避難する事態になると大混雑になり極めて危険です。仮に、無事1階まで降りられたとしても、超高層ビルが林立するところでは、ビル内の人が皆地上に出てしまうと大混雑に拍車がかかることになります。
なお、地震発生後に多くの電気配線の断線などが生じる可能性が高く、漏電による火災(漏電火災)の発生が懸念されます。火災が発生した場合は、防災センターの指示にしたがって行動しましょう。
★超高層ビルを大きく揺らす長周期地震動とは?
マグニチュードが7程度以上の大規模の地震が発生すると、大振幅の長周期地震動が生じます。この地震動は、周期(揺れが一回往復するのにかかる時間)1~2秒以上で長くゆったりと揺れるのが特徴です。マグニチュードが8程度以上の巨大地震では、非常に長い時間の揺れが続くことが予想されています。
高層ビルは短い周期の揺れには上手く逃がすことができるのに対して、この長周期地震動が発生すると共振現象により、長く大きく揺れ続けることがあります。
建物内でこの揺れを経験した方は、「ミシッミシッと鈍い音がして大きく左右にゆっくり揺れ、大船に乗っているよう」と表現しています。
エレベーター内では
商業施設などに行くとエレベーターホールには何台ものエレベーターが並んでいます。高階層行き、低階層行きなどがあり、高階層行きのエレベーターに乗ると途中の階はノンストップで高階層まで昇ります。
このようなエレベーターに乗ってるとき、スマホが緊急地震速報を受信したらどうしらたよいのでしょうか?
①エレベーター内で緊急地震速報を受信したら、すべての階のボタンを押す
エレベーターに乗っているときに緊急地震速報を受信したり、または地震の揺れを感じたら、迷わず全ての階のボタンを押し、最初に停止した階で速やかに降りて、ガラスの窓を避け柱や壁の近くで揺れが収まるまで待ちましょう。
2009年9月以降設置されたエレベーターには、概ね震度5弱以上の揺れを感知すると、最寄り階で自動停止し、自動的にドアが開く地震時管制運転装置が設置されていますが、乗っているエレベーターが該当するかどうか判断できないため、すべての階のボタンを押しましょう。
また、地震時管制運転装置が設置されていても、地震の揺れが強烈な場合などでは、最寄りの階に着くまでに途中で緊急停止してしまうケースが発生しているため、100%万全ではありません。
➁地震の揺れが収まっても階段を利用する
強い揺れ(震度4以上程度)を感じて運転を休止した場合は、エレベーターに損傷がない場合でも技術者の点検を受けるまで運転を再開しません。安全な場所に避難する際は階段を利用しましょう。
③エレベーターに閉じこめられた場合は、あせらずに救助を待つ
万が一、エレベーターに閉じ込められた場合は、緊急連絡ボタン(インターホン)を使って外部に通報し、救助を待ちましょう。大規模災害が発生している場合は、あちこちのエレベーターから一斉に通報することになり、すぐつながらないかもしれません。携帯電話やスマートフォンを持っていれば電話、メールやSNS等で外部に救助を求めしょう。
エレベーター内は通気性があるため、酸素不足になる心配はありません。しかし、狭い閉鎖空間ならではの恐怖感があり、精神的に追い詰められたような状況にも陥ります。この状況が長時間に及ぶと、脱水症状、空腹などによる体力消耗に加え、尿意、便意を催しストレスの強さは計り知れません。さらに夏場だと停電で冷房が効かないため熱中症になる恐れもあります。しかし、大声でわめいたり、ドアを無理矢理開けようとしたりしても体力を消耗するだけですので、できるだけ冷静に待ちましょう。
エレベーターのメンテナンス会社は、人命尊重の観点から閉じ込め者の救出を最優先に対応されますが、大規模地震の場合には閉じ込めが多数発生していることが想定され、また技術者の確保、交通機関の運行状況の影響もあって、救助に時間が掛かる可能性があります。
地震の揺れが収まったら自宅に帰れるのか?
地震の揺れが収まると、商業施設を訪れていた人々は、自宅に残された家族や家屋が心配で、早く自宅に帰りたいという気持ちに駆られると思われます。しかし、公共交通機関が運行停止している中で、最寄り駅に行っても駅前は人で溢れかえっており、混雑に拍車をかけるだけで無駄足になります。
また、大勢の人が一斉に徒歩で帰宅しょうとすると、道路は混雑し、救急・救命活動、救助活動、消化活動、緊急車両の通行の妨げになり、応急活動に支障をきたす懸念があることから、一斉帰宅の抑制が図られます。
帰宅困難者は、施設内または一時滞在施設で待機する
地震発生直後は、JR、私鉄、地下鉄などの公共交通機関では、運転再開に向け緊急の安全点検が行われます。緊急点検や被災の状況によっては応急復旧工事などに相当の時間を要します。運転再開の目途が立っていない段階においては、遠距離を徒歩で帰宅する帰宅困難者(注1)の一斉帰宅を抑制するための周知や呼びかけが行われます。
①施設内での待機が可能な施設の場合(大規模集客施設など)
大規模集客施設など施設内での待機が可能な施設では、利用者に対して、一斉帰宅を抑制するための周知・呼びかけが行われます。同時に、帰宅困難者である利用者は施設内や安全な場所へ誘導されます。利用者は、地震発生直後の混乱が収拾するまでの間、誘導された場所で待機することになります。
➁施設内での待機が困難である施設の場合
施設内での待機が困難である施設では、利用者に対して、一斉帰宅を抑制するための周知・呼びかけが行われます。同時に、帰宅困難者である利用者は一時退避場所(注2)へ案内されます。利用者は、一時滞在施設(注3)の受入が開始されるまでの間、一時的に案内された場所で待機することになります。
一時滞在施設の受入が開始されると、一時滞在施設への案内・誘導が行われます。利用者は、地震発生直後の混乱が収拾するまでの間、案内された一時滞在施設で待機することになります。
(注1)帰宅困難者とは
地震発生時に外出している者のうち、近距離徒歩帰宅者(近距離を徒歩で帰宅する人)を除いた
・帰宅断念者(自宅が遠距離にあること等により帰宅できない人)
・遠距離徒歩帰宅者(遠距離を徒歩で帰宅する人)
が帰宅困難者として扱われます。
(注2)一時退避場所とは
災害時に行き場のない人が、帰宅手段の確保(短時間で交通機関が復旧する場合)や一時滞在施設等の受入が開始されるまでの間に一時的に退避する場所(緊急避難場所等)をいいます。
具体的には、大規模地震の余震などから生命、身体を守ることができるターミナル駅周辺等のオープンスペース、公園や大型駐車場など屋外空間が想定されています。
なお、京都市では「緊急避難広場」、大阪市では「情報提供拠点」と呼ばれています。
(注3)一時滞在施設とは
一時滞在施設は、都道府県や市区町村から帰宅困難者等を一時的に受け入れることについての指定を受けるか、又は受け入れることについて協定を締結した施設をいいます。国の機関、都道府県、市町村が所有する施設だけでなく、民間事業者の協力により提供された施設もあります。開設期間は、受け入れた帰宅困難者等が安全に帰宅開始できるまでの間(原則として発災後3日間)の運営を標準とされており、滞在中は水、食料、毛布などが提供していただけます。
出典:内閣府 防災情報のページ
大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン
混乱収拾後、帰宅困難者は順次、帰路につく
一時滞在施設や大規模集客施設に留まった帰宅困難者は、混乱収拾時期以降、原則徒歩で帰宅することになります。
①自宅までの距離が徒歩帰宅可能な距離内である帰宅困難者
一時滞在施設や大規模集客施設に留まった帰宅困難者のうち、自宅までの距離が徒歩帰宅可能な距離内である帰宅困難者は、混乱収拾期以降、原則徒歩で帰宅することとなります。沿道に「災害時帰宅支援ステーション」があれば、水道水、トイレ、休憩の場を提供していただけます。
➁遠距離のため自宅まで徒歩で帰宅できない帰宅困難者
被災地内の公共交通機関は運行停止していても、安全確認が取れ次第、運行可能な折り返しポイントまで運行が再開されます。
一時滞在施設や大規模集客施設に留まった帰宅困難者のうち、遠距離のため自宅まで徒歩で帰宅できない帰宅困難者は、折り返しポイントまで徒歩で移動し、運行再開した公共交通機関を使って、帰宅することになります。
折り返しポイントまでの沿道に「災害時帰宅支援ステーション」があれば、水道水、トイレ、休憩の場を提供していただけます。
③自力での徒歩帰宅が困難である帰宅困難者はバス等の代替輸送により搬送
混乱収拾時以降、一時滞在施設等に留まった帰宅困難者は、順次、徒歩で帰宅することになりますが、自力での徒歩帰宅が困難な方に対しては、道路啓開等により道路の確保がなされた後、バス等の代替輸送により、自宅まで円滑に帰るための支援が行われます。
★「災害時帰宅支援ステーション」は、災害時に、徒歩帰宅者に対し、水道水、トイレ、沿道情報等の提供、休憩の場の提供を行い、徒歩帰宅者が円滑に帰宅できるよう可能な範囲で支援をしていただく施設です。
沿道にある公共施設のほか、コンビニ、ファミリーレストラン、ガソリンスタンドなど民間事業者の店舗の協力により開設されます。
今後、商業施設を利用するときに心がけたいこと
エレベーターはできるだけ利用しない、利用する場合でも満員のときは見送る
エスカレーターが設置されている階まではエレベーターを利用せず、エスカーレーターを利用しましょう。エスカレーターが設置されていない階に行くときは、やむを得ずエレベーターを利用することになりますが、満員のときは極力見送ることにしましょう。
エレベーターに乗っていて大規模地震に遭遇し閉じ込められた場合、最悪なのは満員の状態で閉じ込められたときです。救出されるまでの間、①立ったままである ➁尿意・便意を催しても簡易トイレさえも使えない ③真夏であっても冷房が効かない狭い個室で“すし詰め”である を耐えなければならないのです。もはや拷問に近いものがあります。
大規模地震だと、あちこちでエレベーターの閉じ込めが発生しているうえ、メンテナンス会社の技術者が通常通り確保できないし、公共交通機関が運行していないなどの悪条件が重なり、救出されるまでに相当の時間が掛かることを覚悟しなければなりません。
外出するときには、普段から心がけたいこと
防災グッズの携行
外出される場合は、日帰り、宿泊にかかわらず、非常時に役立つ次のようなグッズを普段から携行する習慣を身につけておきましょう。万が一の場合、必ず持っていて良かったと思われます。家族で用意するのではなく、幼児は別にして各自が携行することが基本です。
スマホには防災アプリをインストール
地震、台風の発生や火山の噴火など災害に関する警報、緊急情報がプッシュ通知されるアプリをインストールして普段から活用しておきましょう。無料のものでも十分使えます。
ジャンル | 主な機能 |
ニュース・警報 | 緊急地震速報、津波警報、自治体が発令する避難情報などのプッシュ通知 |
ハザードマップ | 全国の自治体が発行したハザードマップへ簡単にアクセス |
避難所ガイド | 現在地周辺の避難所・避難場所を自動検索して、施設までのルート案内 |
帰宅支援 | あらかじめ必要な地域の地図をダウンロードしておくと、通信障害でも使えるオフライン地図 |
家族の安否確認 | アプリをインストールしている家族同士が、GPSの位置情報により居場所を自動的に共有し、さらに安否まで共有 |
救急・救命 | 近隣のAED所在地が分かるアプリと音声と動画による救命措置のナビゲートするアプリ |
緊急対応 | 緊急時に使える『トイレ』を簡単に、すぐに探せるマップ型ナビゲーションアプリ |
運行情報 | 電車の運休、遅延、運転見合わせ、運転再開などの最新の鉄道運行情報をプッシュ通知 |
道路交通情報 | 高速道路や一般道路の交通規制、渋滞情報、通行止め解除のときにメール受信 |
防災アプリについての詳細は、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】災害・緊急時に役立つスマホアプリは?
まとめ
本記事では、都心の繁華街に家族づれで出かけたときに巨大地震に遭遇したら、どのような事態になるのか、どのような行動をすることになるのかを解説しました。
災害に備えるとは、何もグッズを揃えるだけではありません。災害時の状況を想像して、その時どうするか?とイメージトレーニングしておくことも大事です。心構えができておればパニックに陥ることが避けられます。
南海トラフ巨大地震の備えに関する総合的なまとめ記事については、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】防災グッズと日頃の備えで命を守るサバイバル防災術
南海トラフ巨大地震に備える非常食などの防災グッズの詳細については、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】まず1週間分備蓄!食べ慣れた非常食を厳選
【南海トラフ大地震】厳選!本当に必要な防災グッズ(備品・消耗品)
南海トラフ巨大地震の備えとして、アウトドアグッズ、ポータブル電源の購入を検討されている場合は、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】停電時に役立つアウトドアグッズ
南海トラフ巨大地震の備えとして、ウォーターサーバーの導入を検討されている場合は、下記の記事をご参照ください。
【南海トラフ大地震】ウォーターサーバーは停電しても常温の水が飲める
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